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なんでもかんでも

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6曲目=第六章 Dance
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     by 田村夏樹

    6曲目=第六章 Dance


    「リピトさんの意識が戻りましたよ」

    傍に付いていたセーニョが皆に呼び掛けた。

    「おお、気が付いたか。しかしえらく時間がかかったもんじゃ」

    「大柄なベシの声を浴びちゃったからだと思います」

    「ははあ、さてはイヤープラグの効かないやつというのは、、」

    「ええ、僕達にも強烈でした。一度はそれでフォルテが失神してしまって、危なかったんです」

    「ジローさんも吸い付かれたのによく引き剥がせましたねえ」

    「その時はフォルテに助けられました」

    「ジローさん、リピトさんが何かおっしゃりたい様よ」

    ジローがソファーで横になっているリピトさんの傍に行くと

    「ジローさんとおっしゃるんですね、ありがとうございました」

    「あっ、いえ、間に合ってよかったです」

    「身体が硬直して、たくさんのベシが近付いて来た時はもうダメだと思ったんですよ」

    「引き剥がすのに手間取っちゃってすいませんでした」

    「何をおっしゃるんですか、見ず知らずの私の為に危険を犯してまで必死で追い払ってくださって。何とお礼を言っていいか」

    目を覚ましジローの傍に来て、また身体のあちこちを舐めていたフォルテがソファーに手を懸け伸び上がってリピトさんの顔を覗きこんだ。

    「あら、フォルテ君ね。あなたのお陰で助かったわ。ありがとうフォルテ君」

    「ミュウ?」

     

    「ピー、ピー、ピー」

    再び警報装置が鳴った。

    「村に入ったベシはすべて捕獲しました。外に出ても大丈夫です。当分の間救急隊がパトロールします」

    「やれやれこれで安心じゃ」

    「家に戻らなくては」

    「ええ?リピトさん、もう少し安静にしていた方がいいんじゃないですか?」

    「妹が帰って来るんです。そろそろ着く頃だと思うんです」

    「ほう、ダルセさんが帰ってこられるか。何ヶ月ぶりかのう」

    「3ヶ月ぶりになります」

    ユキナがジローに小声で説明してくれている。

    「ダルセさんってすごーく有名なダンサーだよ。世界中公演して回ってるからほとんど家にいないけど」

    「あら、戻られたようですよ」

    車に気付いたフェルマが言った。

    玄関のドアが開けっ放しになっているので驚いている様子だ。

    「私が行ってくるわ」

    マルカが向かいの家に向った。

    「じゃあ少しホッとしましょう。飲み物もって来ます」

    と言ってオブリがキッチンに行ったのでみんなはソファーに戻った。

    「いやあ、大変な誕生日になったもんじゃ、ハッハアー」

    「一番大変だったのはジローさん達でしょ」

    「ほんとに。私だったらパニックになってるわ」

    「ああほんとだ。強いねジローさん」

    「いえ、次々いろんな事が起こってしまって、パニックになる暇がないだけです。あとフォルテが一緒だったのもすごく支えになってます」

    オブリが飲み物を配っている時玄関が開き、ダルセとマルカが入って来た。

    「姉さん」

    小走りにリピトの傍に来たダルセがひざまづきながら

    「大丈夫?マルカさんから大体の話しは聞いたけど」

    「ええ、もう平気よ。明日一日ゆっくりしてればもう大丈夫」

    「よかったあ。あっ、皆さんほんとにありがとうございました」

    と立ち上がって頭をさげた。

    「いやいや、わしらは何もしとらん。姉さんを助けたのはこちらのジローさんと、、」

    ユキナが腕に抱いたフォルテをダルセの前に差し出し

    「フォルテでーす」

    「ミュウ」

    オブリが飲み物を渡しながら

    「まあまあ、ダルセさんも座って何か飲んでください。お姉さん、もう少し動かない方がいいと思うし」

    「ああ、わしの誕生日じゃからな。賑やかになってええわい。さあさあそこに座って」

    「ありがとうございます。じゃあお言葉に甘えて」

    と言ってリピトの足元に腰掛けた。

     

    みんながベシを追い払った時の様子を聞きたがったので、ジローが話し始めた。リピトとダルセがなにやら相談していたが、ジローの話しが終わるとダルセが

    「あのう、喜んでもらえるかどうか、、せめてものお礼の気持ちに踊らせてもらおうかと、、」

    「オッホー、こりゃ凄いことじゃ。世界的なダンサーのダルセさんがわしらの為に踊ってくれるとは」

    「私にできる事はこれしか無いので」

    「きゃあすごーい。よかったわあ今日ベシが出て!」

    「何を言うんですかフェルマ。ま、でも凄いわね。ジローさんとフォルテ君に感謝しなくちゃね」

    「着替えてきますのでちょっと待っててください」

    と言って車の荷物を取ってリピトの家に入っていった。

     

    フェルマがリピトさんに謝っている。

    「ごめんなさいね、変なこと言って。でも私ダルセさんのチケット応募したんだけど、3年先まで予約で一杯だって。当分見れないと思ってたから」

    「いやはやすごい誕生日じゃ。どれソファーを動かして踊るスペースを作ろうじゃないか」

    「そうですね。じゃあ窓の前を空けましょう」

    みんなでソファーを動かしていると、動きやすそうなステージ衣装に着替えたダルセが戻って来た。

    「あっ、それぐらいで充分ですよ」

    と言って広さを確認し、オブリに小さな金属片を渡し

    「これの6曲目をセットしていただけますか?」

    受け取ったオブリが後ろの壁の小さな装置にセットし

    「こちら側を少し暗くしましょう」

    と言ってキッチンとリビングの半分の照明を落とした。

     

    ダルセからオーラが出ているのであろうかリビングの空気がピーンと張り詰めた。音楽が流れ始めた。床にあぐらをかいてじっと座っていたダルセの手が少しずつ少しずつ動きだした。音楽と共に徐々に動きが大きくなっていく、、、。

    突然あぐらをかいた状態から一気に空中へ両手を広げ飛び上がった。着地するとスローモーションフィルムを見ているような動きに移っていく。

     

    ジローは既に鳥肌だっていた。今までにも何度かダンスのパフォーマンスを見た事があったが、『全く次元が違う。身体を動かすだけで、これ程まで人を魅了できるなんて』

    フォルテもそのオーラを感じているのだろうかジローの横で両手をきちんと揃えジッとダルセを見ている。全員が同じ感覚だったのだろう、身じろぎどころか、まばたきする者も一人もいない。

     

    音もなくパトロールの救急隊がゆっくりと移動している。隊員の目には窓に映るダルセのシルエットだけが見えた。

     

    見知らぬ世界の、見知らぬ村で、見知らぬ人達とダンスに見入るジローとフォルテであった。

     

    7曲目=第七章 Dreaming a Lot に続く

    | 小説「ストレンジ・ヴィレッジ」 | 15:54 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |









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