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なんでもかんでも

<< 2003年秋、ヨーロッパツアー日記 | main | 2曲目=第二章 Gentle Journey >>
1曲目=第一章 Morning Mist
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    by 田村夏樹

    ジローが泣いている

    窓辺に佇み

    ジローが泣いている

    朝から降り出した季節外れの冷たい霧雨のせい?

    眉間に皺寄せ うつむきながら駅に急ぐ人々のせい?

    ジローが泣いている

    しこたまぶつけた左足の小指が紫色に変わって来た

    ジローが泣いている

    その横でフォルテも鳴いている

    「みゅう」


     1曲目=第一章 Morning Mist (2005/01/29)

     2曲目=第二章 Gentle Journey (2005/02/05)

     3曲目=第三章 Strange Village 前編 (2005/02/12)

     3曲目=第三章 Strange Village 後編 (2005/02/19)

     4曲目=第四章 Welcome Party 前編 (2005/02/26)

     4曲目=第四章 Welcome Party 後編 (2005/03/05)

     5曲目=第五章 Dialogue 前編 (2005/03/12)

     5曲目=第五章 Dialogue 後編 (2005/03/19)

     6曲目=第六章 Dance (2005/03/26)

     7曲目=第七章 Dreaming a Lot (2005/04/02)

     8曲目=第八章 Then, Normal Life (2005/04/09)

     9曲目=第九章 Journey Again (2005/04/16)

    10曲目=第十章 Wasteland of Peat (2005/04/23)



     

    1曲目=第一章 Morning Mist


     

    「ミュウー、ミュウー」という小さな鳴き声でフッと目が覚めた。カーテン越しの様子から外はまだ暗いようだ。時計を見ると4時半を少し過ぎたところ。

    「おいおいフォルテ。ちょっと早いんじゃないの。まだ真っ暗だよ」

    枕元で2歳 になるチンチラのフォルテが心配そうな表情をして覗き込んでいる。猫でも、いや猫だからこそ飼い主の昨夜からの静かな興奮を感じとって、落ち着かないので あろう。フォルテの飼い主、ジローは明日から始まる2週間の休暇を利用して、徒歩の旅に出る事にした。別に何処といった目的地がある訳でもなく、是といっ た理由も無いのだが、何かに誘われでもしたかのように、なんとなく旅立ちを決めたのだ。

    「まあいいか。夜明けとともに出発というのも悪くないよな」

    と言ってベッドから出ると洗面所に向かった。鏡の前に立ち、顔を洗おうとして

    「やっぱりこういう日にはシャワーを浴びてから行こう」

    と言いながらパジャマを脱ぎ、浴室に入って行った。いつもと違う行動パターンにフォルテが首をかしげている。

     

    「おおっ、気持ちいいね。」

    「ミュウー」

    「あっ、今すぐ飯にするから」

    いつものようにコーヒーメーカーをセットし、大好きなクルミレーズンパンをオーブントースターで暖める。そしていつものように小さなダイニングテーブルでフォルテと向かい合っての朝食。

    「そうだな、お前のキャットフード、何日分持って行くかな?」

    「けっこう重いからなあ。ま、一週間分にして途中で補充しよう」

    「ミュウー」

    「おっ、少し空が白んできたんじゃないか?」

    カーテンを開けて外を覗いてみる。ジローが窓の外を見ているといつもフォルテが肩に乗ってきて一緒に外を眺めるのだ。今も食べてる途中なのにテーブルから背中を伝って肩に乗ってきた。まるでオームのようだ。

    「あまりのんびりしてると夜明けと共に出発ってのができなくなるぞ」

    「フォルテ、はやく飯すましちゃおうぜ」

    「ミュウ」

    「しかしかなり霧が出てる感じだなあ」

     

    朝食を終 え、ジローは着替えと洗面用具と財布、そしてキャットフード一週間分をデイパックに詰め始めた。その周りを少し不安げなフォルテが歩き回っている。いまま でも散歩や近所への買い物にはジローの肩に乗っかって一緒に出かけているので旅に連れて行くのも全く心配はしていないし、フォルテも慣れているはずなのだ が、なんだかいつもより落ち着かない様子だ。もしかしたらフォルテはいつもよりずっと長く家を離れることを判っているのだろうか。あるいはもっと違う何か をこの旅に感じとっているのだろうか。

     

    「さて、準備オーケイ。淡々と出かけるかねフォルテ」

    ジローはいつも散歩に出かける時のようにドアを開け、肩をポンポンと叩いてフォルテを見る。一瞬ためらったがフォルテもいつものようにトットットと助走をつけてジローの肩に飛び乗った。

    「さあ、霧の朝に出発だ。ところでどっちに行こう?とりあえずあの山に向かって行くか」


    2曲目=第二章へ続く

     

    | 小説「ストレンジ・ヴィレッジ」 | 15:26 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |









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