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なんでもかんでも

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音楽
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    by藤井郷子

    音楽について書いてみよう。

    私の音楽を聴いた事のない方から、どんな音楽を演奏しているのか尋ねられる事がよくある。答えるのが難しい。「ジャズです。」と一言で答えると、後日音楽を聴いた後で怒られる事がけっこう多いのだ。
    単語の定義というのは難しい。ましてやそれが音楽の様な形の見えない物となるとなおさらだ。70代の人々の多くにとって、ジャズはベニー・グッドマンやグ レン・ミラー等だし、60代の人々の多くにとってはアート・ブレーキーに代表される様なアメリカ黒人音楽、、、と様々だ。ではジャズの定義とはいったい何 なのか?辞書に載っているそれとは別に、私は音楽家としてそれを「即興に重要な意味をもたせる、無国籍でインターナショナルな音楽」と定義づけしている。 本来新しい文化は、多くの場合異文化の接触により生まれる。ジャズはそれが特に顕著で、ひとつのスタイルを確立した後も常に新しい文化を取り込んでいっ た。アフリカや中南米のリズムとヨーロッパの和声が新大陸アメリカで出会ってジャズが誕生して以来、東ヨーロッパ音楽、ユダヤ人音楽、カントリー等世界の 様々な音楽を実に柔軟に取り込んでいった。そしてこれからもそうしていく事ができる音楽だと思う。また、即興つまり行為主体の音楽の為、美術館や博物館に 飾られる作品主体の芸術表現とは根本的にその性質を異にする。という定義のもとに私は私の音楽をジャズと思っている。でも、これはあくまで私の意見で、 ジャズを1950年代、60年代のビバップ、ハードバップと考える人ももちろんたくさんいる。その人達からみれば、私の音楽はジャズではないという事にな るらしい。まあ私としてはやりたい事をやっているので、その音楽をなんとよんで頂いても一向に構わないのだが。雑誌等では、フリージャズというジャンルで 紹介される事が多い。また、ニューヨークで活動していたせいもあり、ダウンタウン派ともよばれる。「とがっている」という形容もよく使われる。実は私には 何がとがっているのかよくわからない。まあ言葉でその音楽を表現できないからこそ音楽で表現するのだが。

    様々な人々と音楽の話しをするほど、人々の求めているものがマチマチだというのがわかる。それはライブの時、答えて頂いたアンケートを見てもいつも感じる 事だ。コンサートで知っているメロディーを知っている様なアレンジでやってほしいという人もいれば、知っている形をそのまま聴くとがっかりする人もいる。 思い描いている音楽が目の前でその通りに再現される事を期待し、またそれが実際に起こる事に安堵し、満足する人もいれば、思い描けない様な新しい音楽との 出会いを期待し、求めている人もいる。特定の音楽がその人の人生の思い出と結びついていて、その音楽を再び聴く事で大切な思い出を鮮明に呼び起こしたくて 音楽を聴く人もいる。音楽に安らぎを求める人もいれば、刺激を求める人もいる。という事は、残念ながら全ての人の要望に答える事ができない。まあ、それが 音楽の面白いところでもあるのだが。結果、私は私自身が求めている音楽をめざすという事になる。

    自身で興味を常に惹きつけられる様な音を選んで、創作していく。作曲するにしても、即興するにしても、いつも面白いと感じるのは私にとっての答えはひとつ しかないという事だ。最初の音を鳴らす。次にくる音は正解としてひとつだけ存在する。もちろん、これは万人にとっての正解ではなく、私にとっての正解だ。 ただその正解は曖昧な物ではなく、常に明白だ。私は私の中にあるその答えを鳴らす事によって音楽を作る。それがたとえ私だけの正解だとしても、あまりに正 解として明白に存在するので私はこれを自然の摂理、科学の様に感じる。それが他の人に間違いといわれてもなすすべがない。そういう時は「ごめんなさい。」 というしかない。私の言っている事はかなり傲慢で独りよがりにきこえるかもしれない。ただし、即興がその音楽の中で大きな意味を持つという事は、私自身の 信じるところの正解が常にその場にいる聴衆のひとりひとりから影響を受けるという事だ。聴きてが感じる事は驚く程、演奏者に伝わる。それは時として演奏者 のコントロールを超えてしまう程に音楽を変えていく。聴衆が創作の場に立ち会うという意味において、即興音楽は譜面に書き表されたどんな音楽よりも聴衆を 反映している。

    と、まあ色々書いてみたが、書いてみる程、私の音楽について私自身で語ることはできない。
    是非とも、聴きにきてその音楽をその場で感じてほしい。
     
    | エッセイ by 藤井郷子 | 13:59 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |









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