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低音障害型難聴
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    by 藤井郷子


    発症したのは、もう26年くらい前の夏の晩だった。その当時はボストンの音楽学校の学生で、毎日長時間狭いピアノ練習室にこもって練習、大量のアレンジの宿題に追われ、よく言われるところの「ストレス」は溜っていたかもしれない。一人暮らしのアパートの部屋で、窓からの風がいつもと違うように聞こえた。それに気が付くまで、ちょっと時間がかかったと思う。ゴーって風の音や耳のそばで揺れる髪の毛の音までもが聞こえる。なんか変、と気づいたら、どうもなんでも異様に大きな音で頭に響く。おかしいな、とは思ったが、夜半だったし他に身体の不調はなかったので、翌朝まで様子をみた。翌朝まで症状は途切れる事なく続いていた。


    ボストンは世界有数の医療都市。多くの優れた病院がある。マス・アイ・アンド・イヤー・ホスピタル(マサチューセッツ眼科耳鼻科病院)はその中のひとつ。音楽家にとって、耳の異常はやはり不安なもの。学校を休み、朝から飛んで行った。一通りの検査で、若干の聴力の低下が認められたが、大きな低下ではなく、ビタミン剤を出され数日後に再診するようにと言われた。その数日の間に症状はほぼおさまったが、やはり心配なので、もう一度病院に行く。聴力は戻り、診断はストレスで心因性のものだろうと。とても納得はできない。すごい大きな音で聞こえたのが、気のもんだと言われても….。それ以来、2年から3年の間にこの症状は断続的に続いた。アメリカの病院だけでなく、東京でも夫の実家の滋賀県でも数軒の病院をまわって診察を受けたが、どこでもはっきりした説明は受けられず、ゴーという耳鳴りがしている時でも聴力の低下は認められなかった。一軒だけ、滋賀医大で、「人間の耳は大きな音を小さくするようなしくみがあるんですよ。それが、髪の毛一本みたいな細いもので繋がっている。それが何かの拍子ではずれちゃうと大きな音に聞こえちゃうんだと思います」と、なかば納得の行くような説明。でもその「何かの拍子」とは?


    最初、発症してから1年ほどで結婚し、その後しばらく続いた症状はいつの間にか全く起きなくなってしまった。おかしなもので、結婚式の前に仲人をお願いしたご夫妻にごあいさつに行った帰りなど、緊張した時は、特に症状はひどかった。


    17年くらい、全く起きなかったその症状が、今度は冬の晩にいきなり起きた。ニューヨークでの忙しいレコーディングと演奏の後、帰国したその晩だった。「え??これは、もしかするとあの時と同じ音」ゴーという音と水に潜っているような耳が塞がっているような感じ。ニューヨークでの多忙なスケジュールは、たしかに「ストレス」に繋がるものだったかもしれない。それから、またこの症状は断続的に起きるようになった。一番辛いのは、演奏している時だ。小さな音まで大きく聞こえるので、楽器の大きな音は耐えられないような音になる。耳栓も使ったが、耳栓をしたところで、ゴーという耳鳴りはやまない。しばらくしてから、わずかにめまいのような症状も出た。でも、これはめまいかも?程度の軽症で、自分でもよくわからない程度。病院も廻ったが、「軽いメニエールでしょう。くよくよと心配しないで、おいしいものでも食べて下さい」というのんきな診断。聴力も落ちてないなかったので、なんんとなくそのまま放っておいた。それからさらに数年経ち、昨年末いつもより症状が長く続くので、今までは行った事のない耳鳴り名医と言われる耳鼻科を訪れた。聴力検査で右耳の低音の一部が極端に落ちている。これは、ステロイド投与が必要なレベルとの診断でステロイドをだされる。ところが、年末で4日ごとに聴力検査でフォローして投与の量を調整しなくてはいけないはずが、病院も閉まってできない。その上、年始には私が岡山に旅行に行くので、再診できない。そこの先生の迅速で適切な対応で、学会で親しい岡山の耳鼻科の先生を紹介してくださった。ステロイドのお陰で忘年会も年明けの岡山の温泉旅行もノンアルコール。症状自体はずいぶんと楽になり、岡山で受診した時は耳鳴りもほぼなくなっていた。岡山の先生、耳鳴りのみを手がけられている先生で、見るからに学者タイプ。「聴力はほぼ快復、ステロイドはもう使わなくていいでしょう。あなたのような低音のみ聴力が落ちて、ゴーッという耳鳴りがする方は最近たくさんおられるんですよ。現代病ですね。女性に多いようですが、ストレスが原因だと言われています。聴力は戻る事が多いですが、症状は繰り返します。一生、うまくつきあうというふうに考えたほうがいいです」でたー!!「ストレス」これって数値で計れないし、いったい何がどうストレスになるのかもわからない。「病名はなんというのですか?」という私の質問には「低音難聴」と教えて下さった。27年経って、はじめて説明らしきものを受ける事ができたが、結局はよくわからないという事がわかった。たしかに私のまわりでもここ数年似たような症状がでた女性の知人が数人いる。帰宅してインターネットで調べればでてくる、でてくる。「こんな性格の人に多い」とか「のんびりしなさい」とか。


    まあ、そんなに心配しなくてもよさそうだというのがわかり、症状が出たら、ストレスがかかっているアラームと思うようになった。それでも、もちろん性格はなかなか変えられない。昨日もアラームが鳴った。

    | エッセイ by 藤井郷子 | 06:06 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |









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