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なんでもかんでも

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5曲目=第五章 Dialogue (後編)
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     by 田村夏樹

    5曲目=第五章 Dialogue (後編)


    道路に居た何匹かのベシには目も呉れず向かいの家に駆けつけたジローとフォルテは一応玄関を開けようとしたが鍵が掛かっている。

    「よし窓からだ」

    ジローが窓に手を懸けると先にフォルテが中に飛び込んだ。

    「気をつけろフォルテ」

    と叫びながらジローも窓から転がり込んだ。奥の部屋から

    「シャアアアア」

    というフォルテの威嚇する声と

    「ペーン」「ペーン」

    というベシのあの声が聞こえた。ジローがその部屋に駆け込むと椅子に座ったまま硬直しているリピトさんの左足に既に一匹が吸い付いている。そしてもう一匹も右足にまさに吸い付こうとしているところであった。ジローに気付いた7匹ほどのベシが一斉に

    「ペーン、ペーン、ぺーン」

    と叫んだ。一瞬筋肉がギュッと収縮したジローだが、構わず

    「ウッ、ウオオオ」

    と声をあげリピトさんに吸い付いているベシに向って突進して行った。その横では動きの格段に早いフォルテがベシの目を引っ掻いている。

    「クソッ、こいつ。離れろ」

    棒を使ってベシを引き剥がそうとするがしつこく吸い付いていて離れない。

    「ええい、気持ち悪いが仕方ない」

    と言って手で引き剥がしに懸かった。かなりの吸引力だったが必死で引き剥がし、スポッと離れた時、勢い余ってジローも後ろにひっくり返った。壁に頭をぶつけ、一瞬ジローの動きが止まった。

    「グワッ」

    ジローは足に強烈な痛みを感じた。見ると一匹のベシが吸い付いている。

    「クッ、しまった」

    痛みに耐えながら殴りつけてなんとか剥がそうとするがこいつもなかなか離れない。

    「ミュウウウ」

    フォルテが飛んで来た。そいつの下にもぐり込むと4本の足を使って滅多やたらに引っ掻く。吸い付くとしつこいベシもたまらずスポッと離れた。

    「サンキュー、フォルテ」

    「ミュウ」

    急いで立ち上がり、棒を手にしたジローはベシ達を突つきながら部屋から追い出そうとする。しかし群れになるとベシも強気になるのだろうか、山の時と違ってなかなか逃げ出そうとはしない。隙をみてはリピトさんに吸い付こうとするのだった。気が付くとベシの数が増えている。

    「しまった。窓から飛び込んだ時、閉めて来るのを忘れた」

    ジローとフォルテが十数匹に増えた相手を必死で追い払っている時

    「ペーーーーーン」

    ひときわ強烈な叫びが襲った。

    「ウガッ!」

    一瞬気が遠くなりかけたジローだったがブルブルっと頭を振り、かろうじて失神を免れた。見るとあとから入ってきたのだろう、ひと回り大きなベシが居た。

    「こいつか。イヤープラグが効かないってのは」

    ハッとしてフォルテを探すと少し離れた所でうずくまっている。硬直はしていないようだが身体の小さなフォルテには相当な衝撃だったのであろう。近くにいたベシがフォルテに吸い付こうとしている。

    「ウオオオ」

    と叫びながら必死に駆け寄りそのベシを蹴飛ばしてフォルテを抱き上げた。

    「フォルテ!大丈夫か!フォルテ!」

    軽い失神だったのだろう

    「ミュ?」

    と目を覚ますと『何クソッ』っという感じでジローの腕から飛び降り、前にも増して激しくベシに立ち向かうフォルテであった。ジローも急いでリピトさんの前に行き、棒を振り回し追い払い始めた。動きの止まらない相手に焦ったか

    「ぺーーーーーン」「ペーーーーーン」

    立て続けに 強烈な叫びを放つ大柄ベシだったが、一度その衝撃を体験したジローとフォルテは、グッという感じで一瞬動きが止まるものの失神する事はもうなかった。ジ ローの突きが見事に決まり大柄ベシが窓の近くまで吹っ飛んだ。そいつは『こりゃかなわん』とばかり窓から逃げて行った。

    「よし!今の感じだな!」

    突きを決められたベシが次々に吹っ飛んでいく。フォルテに散々に引っ掻かれ、ボロボロになったベシも逃げ出し始めた。

    「フウウ、、」

    一息ついたジローはリピトさんの所へ行き、揺り起こそうとしたが、大柄ベシの強烈な声を浴びたせいか、全く反応が無い。

    「ぐずぐずしてると又別のベシ達が入って来るし」

    手にしていた棒を捨てようとしたジローは顔をしかめた。手の皮が剥け血だらけになっている。

    「アハッ、夢中だったからな。おっと急がなきゃ」

    硬直してい るので少し手間取ったが、座った状態だったのでなんとかリピトさんを背負うとユキナの家に向って歩き出した。道路に居るベシ達をフォルテが威嚇して、ジ ローとリピトさんに近付けないようにしている。ユキナの家の玄関がタイミングよく開き、ジローに続いてフォルテが走り込む。

    「ワッ!!」

    と歓声があがった。

     

    背中のリピトさんを、オブリとポズに預けたジローは床にへたりこんでしまった。

    「ジロー兄ちゃん!」

    ユキナが駆け寄って来る。

    「ジロー兄ちゃん、大丈夫?」

    「ああ、大丈夫だよ。ちょっと緊張の糸が切れただけ」

    「きゃあ、ジロー兄ちゃん手が血だらけ!あっ、足も!お母さーん!」

    リピトをソファーに寝かせ、介抱していたマルカが急いで来た。

    「まあ大変。早く傷口を洗って消毒しなくちゃ」

    「あっ、これ別にちょっと皮が剥けただけですから。ユキナちゃんフォルテを見てやってくれる?」

    ジローの傍で身体のあちこちを舐めているフォルテをユキナは床に腹這いになって

    「大丈夫?フォルテ。怪我しなかった?」

    と言いながらチェックしている。

    「ジロー兄ちゃん、フォルテは大丈夫。何処も怪我してない」

    「ミュウ」

    手の血を洗い落としながら、ホッとするジローであった。

     

    「おおっ、救急隊が来たぞ」

    消毒液を手に塗ってもらいながらジローも窓の外を覗いた。バスぐらいの大きさの銀色の乗り物が空中から大きなバキュームでベシを次々と吸い込んでいる。

    「捕獲したベシはどうするんですか?」

    とオブリに訊ねた。

    「何故山から降りて来たのか原因を調べて、解決したらまた山に戻すでしょう」

    「ああ、やつらだって生きる為に血を吸ってるわけじゃからな」

    「そうねえ、そもそも彼らのテリトリーに私達が入り込んでるんだから」

    「ジローさん、足にも塗りますからそこに腰掛けてください」

    「あっ、はい。」

    マルカがジローのズボンの裾を膝まで上げると、ふくらはぎに小さな二つの穴があり、まだ血が出ていた。しかしマルカが消毒液を塗るとピタッと止まった。

    「ありがとうございます」

    「何をおっしゃるんですか、お礼を言うのはこちらの方ですよ。友達を助けていただいて」

    「ああ、ユキナといい、リピトさんといい、ジローさんがいなかったら大変な事になっておったよ」

    「いえ、僕も吸い付かれて危なかったんです。フォルテに助けられました」

    みんなの視線がフォルテに集まった途端ハッとした表情に変わった。

    「キャッ、フォルテが」

    小さな悲鳴をあげ、ユキナがソファーの上で仰向けに大の字になっているフォルテに恐る恐る近付く。

    「えっ?いびきかいてる」

    「やっぱり、相当疲れたんでしょう、そういう時はこうやって寝るんですよ」

    夢の中でまだベシと闘っているのだろうか、時々手をピクッピクッとさせているフォルテであった。

     

    6曲目=第六章 Dance に続く


    | 小説「ストレンジ・ヴィレッジ」 | 15:53 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |









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